今度の会社ではみんながお金の話をしていた
仮にゴールド株式会社と私が呼んでいる、財務状況の極めてよい会社では、全ての人達が高給をとっていました。
そして、人によるのですが、よく給与やお金の話が出ていました。
会社は、やはりそういう会話をすることを「やめてください」とメッセージを発していました。
けれどゴールド社では、一つ前の会社と違って、
多くの人が会社の悪口を毎日言っていて、
多くの人がその会話の中で
「ここは給与はいいんだけどね」とか、
「ここほどの給与をくれるところは滅多にないから、転職が難しいんだよ」
という話をしていたのです。
その頃の経験から、私は外資系企業で互いに給与の話をしてはいけない理由について、理解した気持ちになっていました。
外資系での中途採用の給与の決まり方
日本の企業では、給与が等級や役職、勤続年数などで決まり、
表から見える立場が同じであれば、年収も大きく変わらないことが推測できました。
少なくとも、私が働いていた企業では、当時はそうだったと思います。
なので、先輩社員の給与明細を見せてもらったとき、
私たちはそれを
「XXX係長の給与」
という感覚で見るのではなく、
「何歳ぐらいになって係長になった場合は、この会社ではこれぐらいの給与なのだな」
と見ていました。
見せている側もそういう意図だったと思います。
「俺の給与を見せてやる」ではなく、
「この会社の給与水準を見せてやる」という感覚です。
でも外資系企業では、少し乱暴な言い方をあえてするならば、
給与は入社時の交渉によって決まる部分が大きいのです。
役職や等級によって報酬の幅が設定されている会社がほとんどなのですが、
雇いたい人がいて、その人の前職の給与があって、
その人にどうしても入社してもらいたいときは、
前職給与からの「上げ幅」をつくります。
その給与が、たとえば、
非管理職の報酬幅に収まらない場合は、
管理職として採用条件を決めたりします。
部下なしのポジションを、
与えたい給与と会社のルールとの間のギャップにより、
部下ありに変更する、
などということはあまりないと思います。
決まった組織の中の
「空いているポジション(たとえ、新設ポジションだとしても)」
を埋めるわけですから、
給与に応じて等級を上げ、
部下なし担当課長(Playing Manager)にすることはあっても、
予定されていなかった部下までつけることは滅多にしません。
けれど、報酬の数字については、
その一つのポジションに前職給が600万だった人が入る場合と、
前職給が800万だった人が入る場合では、
数字が大きく違うことが当たり前なのです。
誤解がないように言っておきますが、
一つのポジションに対して、複数の「良い候補者」がいた場合は、
やはり、
若かったり給与が安かったりする人が採用されます。
現実的に、新卒採用よりも経験者・即戦力採用が多い会社・部署では、
適当な候補者が多くない事情もあります。
競合他社との間で候補者を奪い合うこともよくあります。
財務的に余裕がない会社は「希望給与が高い人」の採用を諦めますが、
財務的に余裕のある会社は、
他社の提示金額にプラス100万して候補者をゲットする、ということがあります。
200万プラスという事例も見たことがあります。
その時私は候補者をとられた側でしたけれど。(苦笑)
事実、私がゴールド株式会社に採用された時も、
他社の提示金額に応じて、オファー金額をポンと上げてくれました。
そんな採用の仕方をしていると、同じ仕事、類似のポジションで給与が大きく違うということが、「普通」になってしまっています。
離職率が高く、どんどん人が採用される組織では、見渡せば報酬基準などわからなくなってしまっているような実態が発生します。
同僚の給与を知ることで起こりうるマイナス面
隣の席の、自分と同じ仕事をしている同年代の人の給与が、
自分より年収にして200万高いと知ったら、
気分がよい人はいません。
会社側の採用の力を上げるために、臨機応変に対応して他社との候補者獲得競争に勝つ。
その結果、社内で公平性が見えにくい報酬支払実態が発生する。
そして、社内で同僚同士「給与についてしゃべられる」と都合がよくない、となっていったのです。
少なくとも、ゴールド社では、私はそのように理解していました。
社員の方も、結果として、それを知ることが良いか悪いか、微妙です。
ゴールド社で、私自身は文句のない給与をいただいていたと思っていましたが、
私より高い給与でも、
自分の待遇に不満をもっている人は多くいました。
外資系の会社では、基本のルール・目安があると言っても、
個別に給与が決まっていると言って過言ではない実態がありますから、
個別賃上げ交渉も可能です。
けれど、賃上げ交渉をすれば必ず成功するわけではありません。
交渉の仕方を間違えると、上司から嫌われることもあります。
「使いにくい」「待遇に不満をもっている」と警戒されて、
それが極論では解雇の方向に向かっていくことも、無くはありません。
個別待遇交渉は両刃の剣です。
私は、最初の外資系企業で数百万単位の大きな昇給をしてもらっています。
あれは、見方によっては、
私が給与交渉に成功した事例
と言えなくもないと思います。
私は、私の待遇を決める上司のM課長とその上の部長に対して、
全く無自覚に
「給与が低い」
と不満をこぼしていました。
事実その会社での同年代の方々に比べて明確に低かった私の給与が、
上司たちの思惑と会社の状況と合致して、
大幅昇給につながりました。
そこにあったリスクについては、私は全く自覚していませんでした。
怖いもの知らずの行動の結果、たまたま良い結果となっただけです。
あれ以来、私は所属しながらの給与交渉を一度もしたことがありません。
昇給したいとき
一般的には、
年収700万の人が年収1000万になりたければ、
その社内でその金額に見合った役職・等級を目指すしかありません。
そういう目標の方向性を定めるためにも、
私は社内の情報について、
コンプライアンス上問題のない範囲で収集すべき、
という個人的信念をもっています。
それは人事の希望とは違うものでしょうけれど。
各等級における報酬の幅は、一般的に公表されていません。
その等級の部下を持つ上司には公開されます。
昇給を待つ方針にしても、
思い切って給与交渉などをする方針にしても、
自分の属する環境が見えなければ、
適格な判断は難しいと思います。
職場の空気によっては、
ゴールド社における私がそうだったように、
何もしなくても他人の給与情報がどんどん入ってくる場合もあるでしょう。
しかし、
そうでない場合は、直属の上司に質問してもよいと思います。
会社の報酬設定自体について質問すると、
回答が貰えないことが多いでしょうが、
「私の等級における昇給上限はいくらですか」
とか
「こういう事情で何年以内に年収いくらを目指したいけれど、その場合はどうしたらいいですか」
などと
「自分について」の相談の形をとると、
差しさわりの無い範囲で教えてくれる上司も少なくないと思います。
ある程度の情報収集をして、
自分が属する等級内にその数字があるならば、
あとは、
時間を待って毎年成果を出しながら昇給を繰り返してもらうことになります。
給与にしても等級にしても、上がることを目指すことは、
会社員として真っ当な目標の方向性です。
しかし、現実には、
会社の業績が悪くて昇給が低い年が続いている。
自分が目指すポジションが空いていない。
という場合もあります。
その場合には、それに甘んじるか、
または、
別の会社まで範囲を広げて求める待遇を得ていくことになります。
しかし転職は、転職自体にリスクがありますから、
「給与を上げたければ転職すればいいじゃないか」
という簡単な話でもありません。
また、ゴールド社での私の同僚・先輩たちが言っていたように、
すでにある程度高い給与を得ていると、
転職によって給与が上がらないことも、
下手をしたら下がることもあるのです。
情報を知って、無駄にストレスになることもある
結局、隣の人の給与を見て、
「うらやましい」「不公平だ」「納得できない」
という感情を抱くことは、
従業員本人にとっても平和を乱すことになります。
かかわる人たちの性格によっては、
それが原因で人間関係が悪くなってしまう可能性も否定できません。
待遇の絶対値に対して、
相対的ではなく絶対的に不満を感じて、
改善したいという話は今回の話とは別です。
けれど、自分の待遇について不満が、
それまでは特になかったのに、
隣の人の給与が自分より200万高いと知ってしまったことで、
心に大きなノイズが発生することもあるならば、残念なことかも知れません。
会社からすれば、
常に比較対象内の一番高い給与の人と比較されて、
その金額じゃないと不満です、転職します、
と言われても困ってしまいます。
給与が、個人個人の採用時の要素によって決まる傾向の強い会社では、
「給与情報は互いにもらさない」というほうが、
誰にとっても無難で平和なのだ、
という理屈が、私にも理解できたのでした。
だからと言って、私個人が情報収集しないか、と言われると、それは話が別です。(笑)
次回 : 外資系の給与は高い。お金と人生の価値基準。気づかない間に忍び寄って染み込んでくるものの危険
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